看護師父さんの仕事と生活の記録

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zoom RSS 日本人の死に時 久坂部羊

<<   作成日時 : 2012/06/29 13:59   >>

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老いや死に関わる医療や介護に現場について、
アンチエイジングビジネスの功罪と、上手な老い方について、
そして、
死に時について、
書かれた本。

面白かった。



私は看護師として、
人の死に関わることがかなりある。

医療現場における人の死については、
疑問に感じることも多いく、
疑問を疑問のまま放置しておくのも苦しいことなので、
何かしら答えがないものかと、
このような本を読んだりする。

読んだ結果、
少し気持ちが晴れたかなとは思う。

死が怖く感じられるのは、
欲望があるせいなのだなということが分かった。



本書から、文章の一部を抜粋して参照するのは、
誤解を生む可能性が高いなと思うけど、
自分用として抜粋しておく。


オムツについて。

不要なオムツは人間の尊厳を損ねるという意見に、私は疑問です。そこにはオムツに対する蔑視、偏見がありませんか。オムツ=赤ん坊と同じ、自分で排泄もきとんとできないというような負のイメージ。p72

オムツも排泄方法の一つ。

使用する人がどう思うかということが問題だろう。



介護現場の現実について。

夜中に五分おきにコールボタンを押す人、財布を盗まれたと騒ぐ人、便器で顔を洗い、冷蔵庫に汚れたオムツを入れ、ところかまわず小便をまき散らす人。そんな老人の世話に追われながら、「泥棒、人殺し」と罵られ、触ってもいないのに「叩いた、痛い痛い」と叫ばれ、「何すんの」と突かれ、つねられ、引っ掻かれる。同じことを何十回となく聞かれ、唾や吐瀉物を浴びせられ、それでも笑顔で我慢しなければならない。相手が認知症だとわかっていても、精神的、肉体的に忍耐の限界にまで追い詰められる。それがグループホームの介護です。p75

高齢の人の入院の多い病院などでは、
看護師の現場にも同じような状況がある。

この一文を真似して、
看護現場の現実について書いてみる。

夜でも昼でもナースコールを握り締めて押し続け、家に帰ると言って夜中に出て行ってしまったり、点滴を引きぬいて部屋中血だらけになっていたり、便を壁に塗りつけてたり、口に入れた食べ物を吹きかけられたり、採血しようとすると暴れだして、刺した針がふっとんできたり、そんな患者さんの看護に追われながら、「呼んでもちっともきてくれない」「いつまで待たせるんだ!」と怒られる。それでも優しく、冷静にしていないといけない。相手が患者さんだと分かっていても、精神的、肉体的に忍耐の限界にまで追い詰められることもある。それが、病院の看護師です。

ジョークのつもりで書き始めてみたら、
笑えなくなった。




現代の老いの現実。

今は、若さ、強さ、美しさなどあ価値になっているので、老いればそれだけ価値を失います。だから、老人は若者の価値を追いかけようとする。アンチエイジングなどはその典型です。この状況では、構造的に若者が優位に立ってしまいます。若者が自然に手に入れているものを、年長者は必死に追い求めなければならないのですから。そういう老人に、威厳などあろうはずがありません。若者に敬えと言っても無理です。p100

年上の人を自然に敬うことが出来た時代は、
とっくに終わっている。

しかし一方で、
そういう時代だからこそ、
老いることの強みもある。

むかしもそうでしたが、今の若者は基本的にバカです。見識もないし、経験もない。そのくせ欲望と執着は強い。得をすることばかり考え、少しでも人生を楽しみたいと望み、がむしゃらに努力してみせたり、逆に引きこもって無関心になったりする。現実の厳しさをわきまえずに、甘い考えで都合のいいことばかり主張する。
そういう若者に対して、老人は圧倒的に有利な立場にいます。p112


お年寄りが若々しいのは良いことだと思うけど、
若者と同じように欲望に執着すれば、
当然若者に負けるだろうということ。




上手な老い方のポイント。

幸福な老後を目指すなら、自らの境遇をあれこれ言う前に、”満足力”をつけたほうが早道ではないでしょうか。老人の知恵として、欲望にはきりがないと悟り、”無頓着力” ”満足力” ”感謝力” などをつけたほうがいい。それができれば、浅はかな若者たちも自然な敬意を抱くようになるでしょう。p117

消費経済は、
出来るだけ欲望を抱いてもらったほうが儲かるから、
望まない人の欲望にまで火をつけようとする。

火の消し方も知っておかないといけないだろう。




苦しみの少ない最後について。

近代医療の発達する前は、たいていの人が自分の家であまり苦しまずに死んでいました。自然に任せておけば、人間はそれほど苦しまずに死にます。それは動物の死を見ても明らかなことです。p145

私と同じく在宅医療で看取りをしている複数の友人が、口をそろえて言います。
「老人は、乾いて死ぬのがいちばん楽そうやな」
つまり、食欲がなくなり、水分も摂らなくなって、そのまま死に至るのがもっとも穏やかだということです。p147


医療が十分でない時代は、
多くの人がそうやって穏やかに死んだ。

現在は、
死ぬときまで点滴をしているとうのが当たり前になっている。




医療費について。

日本の国民医療費が三十三兆円を越えて、大きな問題になっているのは周知の通りです。中でも終末期といわれる死の直前の医療費が、大きな負担となっています。統計によって異なりますが、終末期医療費が全老人医療費の二十パーセントをしめるとか、国民一人が一生に使う医療費の約半分が、死の直前の二ヶ月につかわれるという報告があります。p161

この部分の医療費を削減しようという主張は、
ほとんど聞くことがない。




死に臨む心境について。

ああ、楽しい一生だった、なかなか面白い人生だった、あのときは楽しかった、あんなこともあった、こんなすごいこともあった、つらいとき、苦しいときもあったけれど、よくがんばった、あれほど笑えて、あれほど泣いて、感動したり、興奮したり、満腹したり、うっとりしたり、きれいだなとか、切ないなとか、素晴らしいと思ったり、怒ったり、考え込んだり、嘆いたり、想えば盛りだくさんな人生だった・・・・・。
そんな気持ちで最後を迎えられれば、少しは落ち着いて逝けるのではないでしょうか。それ以上の人生を望んでも、きりはないのですから。p200


このような気持ちには、
まだなれないな。



最後に、
看護師として、その通りだなと思った一文。

ふだん病気から遠いところにいて、現実を知らない人の善意は、なんと怖いものでしょう。p159

家で最期を看取りたい、
という家族の希望に対して、
親戚などが、
こんな状態で家に連れて帰るとは何事かと、
怒り出すような場合、
看護師としてもとても辛くなる。

著者の言うように、
死を支える医療の必要性は、
確かに高いなと思う。




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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
なるほどね。
家で看取った父、介護ホームで最期を迎えた母、
病院で最後を迎えた実家の父、それぞれの死の迎え方を本人が選ぶことはできませんでしたが、残ったものが一応の安堵感を得ることはできました。
それぞれを看ていると、死に方は生き方なのだなあ
と感じました。歳の順とはいきませんが、父、母を送ると次は自分の番だと、考えるようになります。
吾亦紅
2012/07/01 21:40
「自分も半分過ぎたな」と感じるこのごろです。

もり
2012/07/02 07:00
日本人にもっと「死」を考える機会を作る為にはどうしたらいいんでしょうね。死がどこか遠くに行っているうちは、決して医療費は下がらないでしょう。医療者側から下げようと働きかける事は少ないでしょうから。
それにしても、笑えない一文、どちらの現場も知っているだけに笑えません…。でも、うまいです(笑)。
和みの風
2012/07/06 02:08
コメントありがとうございます。
「死」について考える機会を持つためには、個人的には、宗教に携わる人がもっと頑張らないといけないんじゃないかと思っています。
人が死について一番意識するのは、身近な誰かが死んだ時だろうと思いますが、死者のより身近にいる人ほど、葬式などの準備で忙しくて、死を悼む機会が少なかったりします。儀式の手順は厳密に決められていて、しかし当事者にはその儀式の意味もよく知らされず、振り回されているうちに終わる。
そういうのは、そろそろ止めになってほしい。
身近な人が死んだ時に、その人の生きてきた時間についてじっくり振り返る。そういう体験が、自分の生死についてリアルに考えるきっかけになるような気がします。
もり
2012/07/06 10:14

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